窮談になる。即ち多く印刷工場を相手としての苦鬪史である。休刊してゐた『創作』をその年から自分自身の手でまた/\再興して今日まで續けて來てゐる道中の話となるのである。

 然し、どうしたものか小生には實のところ貧乏といふものがさほどには苦にならない。よくよくの貧乏性に生れて來てゐるのか、その時/\ですぐ忘れてしまひ得る幸福な性質を持つてゐるのか、その場はとにかく、その前後などを考ふることに於て、さほどには苦にならない。もう歳も歳だし、子供も大きくなつたし、それに三界無宿《さんがいむしゆく》の身で、今少し何とか考へねばならぬのだが、考へるつもりではゐるのだが、どうもまだ身にしみて來ない。おしまひまでこれで押してゆくのかも知れない。



底本:「若山牧水全集 第七卷」雄鷄社
   1958(昭和33)年11月30日発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:柴 武志
校正:浅原庸子
2001年3月20日公開
2005年11月14日修正
青空文庫作成ファイル:
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