樹木とその葉
歌と宗教
若山牧水

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)杳《はる》かに

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#天から3字下げ]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)いよ/\寂しく、
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 私は宗教といふものを持たない。また、それを知らない。知るべき機會にまだ遭遇しないでゐるのである。
 既成宗教に對する概念も極めて漠たるもので、寧ろ古いお寺とかお宮とか佛像とか、または昔の多くの殉教者たちの傳説などに親しみを感じてゐる位ゐのもので、全く宗教といふことに就いて云々する資格はないのである。
 然し斯ういふ心持は或はその宗教といふものに通じてゐるのではあるまいかといふことを折々考へる事がある。それは「歌」に對する私の心情である。
 歌に對する私の考へを極く簡單に言ふと、歌は自分を知りたいために詠むもの、守り育てたいために詠むもの、慰め樂しませ勵ますために詠むものと私は思つて居る。
 自分の生れて來てゐること、生きて行かうとしてゐること等に氣のついてゐる人は餘り多くあるまい樣におもはれ
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