樹木とその葉
酒の讃と苦笑
若山牧水

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)心は蘇《よみがへ》り、

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]せ

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)とり/″\に
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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[#ここから3字下げ]
それほどにうまきかとひとの問ひたらば何と答へむこの酒の味
[#ここで字下げ終わり]
 眞實、菓子好の人が菓子を、渇いた人が水を、口にした時ほどのうまさをば酒は持つてゐないかも知れない。一度口にふくんで咽喉を通す。その後に口に殘る一種の餘香餘韻が酒のありがたさである。單なる味覺のみのうまさではない。
 無論口であぢはふうまさもあるにはあるが、酒は更に心で噛みしめる味ひを持つて居る。あの「醉ふ」といふのは心が次第に酒の味をあぢはつてゆく状態をいふのだと私はおもふ。斯の酒のうまみは單に味覺を與へるだけでなく、直ちに心の營養となつて
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