樹木とその葉
空想と願望
若山牧水

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)石楠木《しやくなぎ》

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   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)食つて※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]り度い
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噴火口のあとともいふべき、山のいただきの、さまで大きからぬ湖。
あたり圍む鬱蒼たる森。
森と湖との間ほぼ一町あまり、ゆるやかなる傾斜となり、青篠密生す。
青篠の盡くるところ、幅三四間、白くこまかき砂地となり、渚に及ぶ。
その砂地に一人寢の天幕を立てて暫く暮し度い。
ペンとノートと、
愛好する書籍。
堅牢なる釣洋燈、
精良な飮料、食料。
石楠木《しやくなぎ》咲き、
郭公、啼く。

誰一人知人に會はないで
ふところの心配なしに、
東京中の街から街を歩き、
うまいといふものを飮み、且つ食つて※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]り度い。

遠く望む噴火山のいただきのかすかな煙のやうに、
腹這つて覗く噴火口の底のうなりの樣に、
そして、千年も萬年も呼吸を續ける歌が詠み度
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