うめの花はつはつ咲けるきさらぎはものぞおちゐぬわれのこころに
梅の花さかり久しみ下|褪《あ》せつ雪降りつまばかなしかるらむ
梅の花褪するいたみて白雪の降れよと待つに雨降りにけり
うめの花あせつつさきて如月《きさらぎ》はゆめのごとくになか過ぎにけり
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これらはその次の集『朝の歌』に出てゐる。
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梅の木のつぼみそめたる庭の隈に出でて立てればさびしさ覺ゆ
梅のはな枝にしらじら咲きそめてつめたき春となりにけるかな
うめの花紙屑めきて枝に見ゆわれのこころのこのごろに似て
褪《あ》せ褪《あ》せてなほ散りやらぬ白梅のはなもこのごろうとまれなくに
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その次『白梅集』には斯うした風にこの花を歌つたものがなほ多い。
昨年はことに梅を詠んだものが多かつた。ほめ讚へたものもあつたが、矢張り淋しみ仰いだものが多かつた。
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春はやく咲き出でし花のしらうめの褪せゆく頃ぞわびしかりける
花のうちにさかり久しといふうめのさけるすがたのあはれなるかも
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ところが今年はまだ一首もこの花の歌を作らない
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