くその消滅を計り度い。心から好きなら飮むもよろしい。何を苦しんでかこれを稽古することがあらう。一度習慣となるとなか/\止められない。そしてだらしのない、いやアな酒のみになつてしまふのだ。
 全國社友大會の近づく際、特にこれらの言をなす所以《ゆゑん》である。

 旅さきでのたべものゝ話。
 折角遠方から來たといふので、たいへんな御馳走になることがある、おほくこれは田舍での話であるが。
 これもたゞ恐縮するにすぎぬ場合がおほい。酒のみは多く肴をとらぬものである。もつとも獨酌の場合には肴でもないと何がなしに淋しいといふこともあるが、誰か相手があつて呉れゝばおほくの場合それほど御馳走はほしくないものである。
 念のために此處に私の好きなものを書いて見ると、土地の名物は別として、先づとろゝ汁である。これはちひさい時から好きであつた。それから川魚のとれる處ならば川魚がたべたい。鮎、いはな、やまめなどあらばこの上なし。鮒《ふな》、鮠《はや》、鯉、うぐひ、鰻、何でも結構である。一體に私は海のものより川の魚が好きだ。但しこれは海のものよりたべる機會が少ないからかも知れない。
 それから蕎麥《そば》、夏な
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