樹木とその葉
木槿の花
若山牧水

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)分《ぶん》に過ぎた

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)見て※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]つて、

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)まだ/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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 この沼津に移つて來て、いつの間にか足掛五年の月日がたつてゐる。姉娘の方が始終病氣がちであつたのが移轉する氣になつた直接原因の一つ、一つは自分自身東京の繁雜な生活に耐へられなくなつて、どうかして逃げ出さうとしてゐたのが自然さうなつたのでもあつた。自分は山地を望んだが、子供の病氣には海岸がいゝといふわけで、そしていつそ離れるなら少なくも箱根を越した遠くがいゝといふので、何の縁故もないこの沼津を選んだのであつた。
 何の縁故もないとはいふものゝ、自分等の立てゝゐる歌の結社にこの沼津から一人の青年が加入してゐたのをおもひ出して、先づ彼に手紙を出し、とりあへず
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