私の眼には映つた。遥かな渓を思ふごとに私の心にはいつもそれら寂しい人たちの影が浮んで来る。
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雪解水《ゆきげみづ》岸にあふれてすゑ霞む浅瀬石川《あぜいしがは》の鱒とりの群
むら山の峡より見ゆるしらゆきの岩木が峰に霞たなびく
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 相模三浦半島のさびしい漁村に二年ほど移り住んでゐた事があつた。小さな半島に相応した丘陵の間々に小さな渓が流れてをる。一哩も流れて来れば直ぐ汐のさしひきする川口となるといふやうな渓だ。それでも私はその渓と親しむことを喜んだ。川に棲むとも海に棲むともつかぬやうな小さな魚を釣る事も出来た。
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わがこころ寂しき時しいつはなく出でて見に来るうづみ葉の渓
わが行けば落葉鳴り立ち細渓を見むといそげるこころ騒ぐも
渓ぞひに独り歩きて黄葉《もみぢ》見つうす暗き家にまたも帰るか
冬晴の芝山を越えそのかげに魚釣ると来れば落葉散り堰《せ》けり
芝山のあひのほそ渓ほそほそとおち葉つもりて釣るよしもなき
こころ斯く静まりかねつなにしかも冬渓の魚をよう釣るものぞ
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 みなかみへ、みなかみへと急ぐこ
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