の息子とかで、家はかなり大きな店らしく、その手紙と共に大勢の追手が出て、その一隊が高野からあと/\と辿つて今日一度この山へ登つて來、諸所を調べた末一度下りて行つたが、驛前の宿屋で今朝の話を聞いて夕方また登つて來たのだ相である。
「旦那樣が御酒をお上りになつてる時、其處の襖の間から覗いて行つたのですよ。」
といふ。
「兎に角ひどい目に會つたものだ。」
と笑へば、
「何も慾と道づれですからネ。」
といふ。
「え、……?」
私がその言葉を不審がると、
「アラ、御存じないのですか、その人には五十圓の懸賞がついてゐるのですよ。」
[#ここから3字下げ]
末ちさく落ちゆく奈智の大瀧のそのすゑつかたに湧ける霧雲
白雲のかかればひびきうちそひて瀧ぞとどろくその雲がくり
とどろ/\落ち來る瀧をあふぎつつこころ寒けくなりにけるかも
まなかひに奈智の大瀧かかれどもこころうつけてよそごとを思ふ
暮れゆけば墨のいろなす群山の折り合へる奧にその瀧かかる
夕闇の宿屋の欄干《てすり》いつしかに雨に濡れをり瀧見むと凭れば
起き出でて見る朝山にしめやかに小雨降りゐて瀧の眞白さ
朝凪の五百重《いほへ》の山の靜けき
前へ
次へ
全27ページ中25ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
若山 牧水 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング