にかかりて響く奈智の大瀧
雲のゆき速かなればおどろきて雲を見てゐき瀧のうへの雲を
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その翌日、山を降りて再び勝浦に出た。そしてその夜志摩の鳥羽に渡るべく汽船の待合所に行つて居ると、同じく汽船を待つらしい人で眼の合ふごとにお辭儀をする一人の男が居る。見知らぬ人なので、此處でもまた誰かと間違へてゐると思ひながら、やがて汽船に乘り込むとその人と同室になつた。船が港を出離れた頃、その人は酒の壜を提げていかにもきまりの惡さうなお辭儀をしい/\私の許へやつて來た。
その人が、昨日の夕方、奈智の宿屋で襖の間から私を覗いて行つた人であつた。
底本:「若山牧水全集 第五卷」雄鷄社
1958(昭和33)年8月30日発行
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:kamille
校正:林 幸雄
2004年9月25日作成
青空文庫作成ファイル:
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