古い村
若山牧水

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)日向國《ひうがのくに》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)空冥|界《さかひ》を

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)振※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]す

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)なか/\に
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−

 自分の故郷は日向國《ひうがのくに》の山奧である。恐しく山岳の重疊した峽間《けふかん》に、紐のやうな細い溪が深く流れて、溪に沿うてほん[#「ほん」に傍点]の僅かばかりの平地がある。その平地の其處此處に二軒三軒とあはれな人家が散在して、木がくれにかすかな煙をあげて居る。自分の生れた家もその中に混《まじ》つて居るので、白髮《しらが》ばかりのわが老父母はいまだに健在である。
 斯く山深く人煙また極めて疎《そ》なるに係らず、わが生れた村の歴史は可なりに古いらしい。矢の根石や曲玉《まがたま》管玉等を採集に
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