「へえ」に傍点]と言ひながら懷中へ兩手を入れてやがて紙にひねつて、ほんの草鞋錢だが持つて行つて呉れとさし出した。自分はうれしく頂いて袂に入れて、何かまだ話し出さうとすると、彼はすぐ一人でお辭儀をしてとぼ/\と坂下の方に降りて行つた。
 自分はその次の驛から馬車に乘つた。思ひ出して袂から先刻のひねり[#「ひねり」に傍点]を取出して見ると、五十錢銀貨が三枚包んであつた。



底本:「若山牧水全集 第九卷」雄鶏社
   1958(昭和33)年12月30日発行
初出:「新潮」
   1909(明治42)年6月号
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:林 幸雄
校正:今井忠夫
2004年1月20日作成
青空文庫作成ファイル:
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