金比羅參り
若山牧水

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)村井の武《たけ》ちやん

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)郷里|坪谷《つぼや》村の

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)のんき者[#「のんき者」に傍点]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)いろ/\の話にも
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 少年世界愛讀者諸君。これはわたしの小さかつた時の思ひ出話で、小説ではありませぬ。地名人名等、すべて本名を用ゐてあります。
 わたしの十二歳の春、丁度高等の二年から三年に移らうとしてゐた時の、今から三十三年以前の話です。その頃は小學校の學級の制度が現在とは違つてをり、尋常科高等科ともに四年づつになつてゐました。ですから高等二年といふと、現在の尋常六學年級に當ります。
 日向の國延岡町といひますと、今は相當開けてゐるさうですが、その頃は極くひつそりした田舍町でありました。でも、内藤豐後守といふ御譜代の殿樣のお城のあつた城下町だけに、寂しいけれど上品なところのある町でした。
 五個瀬川と大瀬川といふ二つ
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