が二三人ありました。で、たいへん都合よく、十一歳の少年は一人前の旅客として、ある一室に通されました。そして、胸を躍らせつゞけに、その日の夕方を待つことになりました。
その日の夕方、豫定どほりに母と都農《つの》の義兄とは馬車でその宿にやつて來ました。都農の義兄といふのは都農といふ町で肥料雜穀商を營んでをり、その處へわたしの一番上の姉が嫁いでゐました。
思ひもかけぬわたしの顏をその宿屋で見出した母の驚きは、これはもう言葉の外でありました。驚き、怒り、且つ嘆き、これからすぐ夜道をして延岡へ歸れ、自分も送つて行くといふのです。流石に、わたしも迷ひが覺めて、それではこれから夜道を踏んでまた六里を走らうと思ひ出しました。ところが都農の兄といふのが田舍者としては、割に手廣く商賣をしてゐますだけに度胸も大きく、わたしの今度の企てた亂暴にひどく興味を覺えたと見えて、わたしに味方し、しきりに母にとりなして呉れました。
また折々商用でわたしの村に來て、わたしの家に泊つたりしてわたしを可愛がつて呉れてゐた日高屋の番頭の庄さんといふのも、わたしに代つて詫びつ頼みつして呉れましたので、終《つひ》には母の怒も
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