※[#「木+怱」、第3水準1−85−87]を探しつゝくさぎの芽をも見付けた。臭木と書くのであらうとおもふが、この木はその葉も枝も臭い。たゞ、若芽のころ摘んで茹《ゆ》づればそのくさみは拔け、齒ざはりのいゝあへものとなるのである。
 ともに味噌あへにするのであるが、※[#「木+怱」、第3水準1−85−87]には少し酢を落すもよい。※[#「木+怱」、第3水準1−85−87]の芽の極く若い大きいのだと、紙に包んで水に濕めし、それを熱灰の中に入れてむし燒にするのが一等うまい。獨活《うど》の野生の若いのをもまたさうしてたべる。これは然し、ほんの一つか二つ、初物として見出でた時に用ゐらるゝ料理法でもある。つまり非常に珍重してたぶる謂《いひ》である。
 二階などからはわたしの庭とも眺められるその松原にはまた無數の茱萸《ぐみ》の木が繁つてゐる。それこそ丈低い林をなしてゐる所がある。苗代ぐみもあれば秋茱萸もある。苗代茱萸は今が丁度熟れどきである。昨日の朝、濱に出て地曳を見てゐた。そして一緒に網のあがるのを待つてゐた二人の娘がいつか見えなくなつた。程なく歸つて來た彼等はわれ先にと『阿父さん、手をお出しなさい
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