家のめぐり
若山牧水
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)野蒜《のびる》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「木+怱」、第3水準1−85−87]《たら》を
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)なか/\手に入らぬものゝ一つである。
−−
先づ野蒜《のびる》を取つてたべた。これは此處に越して來た時から見つけておいたもので、丁度季節なので三月の初め掘つて見た。少し過ぎる位ゐ肥えてゐた。元來此處の地所は昨年の春までは桃畑であつた。百姓たちが桃畑の草をとつて畑つゞきの松林の蔭に捨て、毎年捨てられた草が腐つて所謂腐草土となり、その腐草土の下にこの野蒜は生えてゐたのである。しかも無數に生えてゐる。ざつと茹《ゆ》でて、酢味噌でたべる。いかにも春の初めらしい匂ひと苦味とをもつた、風味あるものである。
神武天皇だかの御歌の中に『野蒜つみに芹つみに……』といふ句のあるのがあるが、わたしは郷里で幼い時よくこの野蒜つみ芹つみをやつ
次へ
全5ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
若山 牧水 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング