鮎釣に過した夏休み
若山牧水
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)日向《ひうが》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)明治[#「明治」は底本では「昭治」と誤記]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)いよ/\となると、
−−
わたしは、日向《ひうが》うまれである。むづかしくいふと宮崎縣東臼杵郡東郷村大字坪谷村小字石原一番戸に生れた。明治[#「明治」は底本では「昭治」と誤記]十八年八月廿四日のことであつたさうだ。村は尾鈴山の北麓に當る。そこの溪間だ。この溪は山陰《やまげ》村にて耳川に注ぎ、やがて美々津にて海に入る。山陰村より美々津港までの溪谷美(といつても立派な河であるが)は素晴らしいものであるが、邊鄙《へんぴ》のことゝて誰も知るまい。同地方特産の木炭の俵の上に乘せられてこの急瀬相次ぐ耳川を下ることは非常に愉快である。下り終ると美々津の港の河口に日向洋の白浪の立つてゐるのがそこの砂濱の上に見える。小さい時山奧から出て來てこの浪といふものを見た時はほんとに驚喜したものであつた。
さうした、山あひ
次へ
全5ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
若山 牧水 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング