たべものの木
若山牧水
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)寢上戸《ねじやうご》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ひそ/\と
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
私は寢上戸《ねじやうご》とかいふ方で、酒に醉ふと直ぐ眠つてしまふ。いまの晩酌が大抵五時半か六時から始つて七時半か八時に及ぶ。飮むだけ飮んでしまへばものゝ三十分と起きてはゐられないで床に潜る。そして午前の二時か三時、遲くも四時には起き上つて書齋に坐る。そのために其處には小さな爐が切つてあり、毎晩火が埋《い》けてある。
此頃は頭の工合も惡いため、讀書らしい讀書もせず、氣を入れてものを書くとか歌を作るとかいふこともしない。煙草を吸ひ、茶をいれ、新聞雜誌の選歌などをしながら夜の明けるのを待つ。
四人の子供のうち、上と下の兄弟は寢坊だが中の姉妹は早起きである。暫くは床の中でひそ/\とおしやべりをやつてゐて、やがて起き上つて私の部屋にやつて來る。五時前後である。無論雨戸はしまつてゐるし、どの部屋でもまだ寢靜まつてゐるので、此處に來るよりほかないのである。
次へ
全10ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
若山 牧水 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング