でもいいのです。つまりちょっと待って下さい、あれは地質上、あんなに青いのではないのですからネ」
「ほほン、地質で青いのかとおもいましたのに、地質以外の性質で青いちゅうのは信じられまへんな」
「いや信じられますよ。あなたはきょう東京から来た東京タイムスの朝刊をお読みになりましたか。読まない、そうでしょう。新聞を見るとあの長崎町二丁目七番地先に今掘りかえしていてたいへん道悪のところがあります。その地先で昨夜、極東染料会社の移転でもって、アニリン染料の真青な液が一ぱい大樽《おおだる》に入っているのを積んだトラックがハンドルを道悪に取られ、呀っという間に太い電柱にぶつかって電柱は折れ、トラックは転覆《てんぷく》し、附近はたちまち停電の真暗やみになった。そしてあたり一杯に、その染料が流れだして、泥濘《ぬかるみ》が真青になったと出ています。何もしらないで、現場へ飛びだした弥次馬《やじうま》たちが、後刻自宅へ引取ってみると、誰の身体も下半分が真青に染っていて、洗っても洗っても取れないというので、会社に向け珍な損害賠償を請求しようという二重の騒ぎになったとか、面白可笑しく記事が出ているんです。カオル嬢
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