の用心棒が駈けつけた。総一郎はすこし生色をとりかえした。
 警察への使者には、田辺課長が立った。
 彼は新聞紙利用の脅迫状を、蠅の木乃伊《ミイラ》とともに提出し、主人の懇願《こんがん》の筋《すじ》をくりかえして伝えて、保護方《ほごかた》を頼んだ。
 署長の正木真之進《まさきしんのしん》は、そのとき丁度、鴨下ドクトル邸へ出かけていたので、留守居の警部補が電話で署長の指揮を仰いだ結果、悪戯《いたずら》にしても、とにかく物騒だというので、二名の警官が派遣されることになった。
 すると田辺はペコンと頭を下げ、
「モシ、費用の方は、玉屋の方でなんぼでも出して差支《さしつか》えおまへんのだすが、警官の方をもう三人ほど増しておもらい出来まへんやろか」
 というと、警部補はカッと目を剥き、
「阿呆かいな。お上《かみ》を何と思うてるねン」
 と、一発どやしつけた。
 脅迫状は、一名の刑事が持って、これを鴨下ドクトルの留守宅に屯《たむろ》している署長の許へとどけることになった。


   東京からの客


 そのころ鴨下ドクトルの留守宅では、屯《たむろ》していた警官隊が、不意に降って湧いたように玄関から訪
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