孔《あな》だすが、あれはどないしまひょうか」
「あああの空気孔か」と、総一郎は白い天井の隅に、一升|桝《ます》ぐらいの四角な穴が明いている空気抜きを見上げた。そこには天井の方から、重い鋳物《いもの》の格子蓋《こうしぶた》が嵌《は》めてあった。「さあ、まさかあれから大の男が入ってこられへんと思うが、――」
「さようですナ、あの格子の隙から入ってくるものやったら、まあ鼠か蚊か――それから蠅ぐらいなものだっしゃろナ」
「なに、蠅が入ってくる。ブルブルブル。蠅は鬼門《きもん》や。なんでもええ、あの空気孔に下から蓋《ふた》をはめてくれ」
「下から蓋をはめますんで……」
「出来んちゅうのか」
「いえ、まだ出来んいうとりまへん。いま考えます。ええ、こうっと、――」
 下僕《しもべ》たちが脳味噌を絞った挙句《あげく》、その四角な空気孔を、下から厚い紙で三重に目張りをしてしまった。
「さあ、これでもう大丈夫です。こうして置いたら蠅や蚊どころか、空気やって通ることが出来しまへん」
 総一郎は、それでも不安そうに天井を見上げた。
 そのうちに、会社からは田辺課長をはじめ山ノ井、小松などという選《え》りすぐり
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