「皆目わかっていない。――君には見当がついているかネ」
「さあ、――」と帆村は天井を見上げ、「とにかくわが国の殺人事件に機関銃をぶっぱなしたという例は、極《きわ》めて稀《まれ》ですからネ。これは全然新しい事件です。ともかくも兇器をとこから手に入れたということが分れば、犯人の素性《すじょう》ももっとハッキリすると思いますがネ」
「うん、これはこっちでも考えている。両三日うちに兇器の出所は分るだろう」
 看護婦の君岡が、紅茶をはこんできた。検事は、病院の中で紅茶がのめるなんて思わなかったと、恐悦《きょうえつ》の態《てい》であった。
「――それから検事さん」と帆村は紅茶を一口|啜《すす》らせてもらっていった。「あの大|暖炉《ストーブ》のなかから出てきた屍体のことは分りましたか」
「うん、大体わかった――」
「それはいい。あの焼屍体の性別や年齢はどうでした」
「ああ性別は男子さ。身長が五尺七寸ある。――というから、つまり帆村荘六が屍体になったのだと思えばいい」
「検事さんも、このごろ大分修業して、テキセツな言葉を使いますね」
「いやこれでもまだ迚《とて》も君には敵《かな》わないと思っている
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