。警官は怪訝《けげん》な顔をして、傍《そば》によってきた。このとき廊下を距《へだ》てた向いの暗い室の扉が、音もなく細目に開いて、その中から一挺《いっちょう》の太い銃口《じゅうこう》がヌッと顔を出した。
「呀《あ》ッ、あぶないッ!」と叫んだが、既に遅かった。ダダダーン、ヒューッと、発射された銃弾は帆村たちのいる室内に撃ちこまれた。
「うわーッ、ウーム」
苦しい呻《うめ》き声とともに、監視の警官が、ドサリと床上《ゆかうえ》に人形のように転がった。
「ウウン、やられたッ」
と、こんどは帆村が絶叫《ぜっきょう》した。素早く安楽椅子のかげに身をかわした彼だったが、途端《とたん》に一弾飛びきたって左肩に錐《きり》を突きこんだ疼痛《とうつう》を感じた。彼は床の上に自分の身体が崩れてゆくのを意識した。そして階下から湧き起る警官隊の大声と階段を荒々しく駈けあがってくる靴音とを、夢心地に聞いた。
空虚《くうきょ》のベッド
青年探偵の帆村荘六は恐ろしい夢からハッと覚めた。
気がついて四囲《あたり》を見まわすと、自分は白い清浄《せいじょう》な夜具《やぐ》のなかにうずまって、ベッドの上に寝
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