げられてしまった。その惨《みじ》めな姿がこの歓楽街から小暗い横丁の方へ消えていくと、あとを見送った弥次馬たちはワッと手を叩いて囃したてた。
それと丁度同じ時刻のことであったが、本邸に帰った糸子は、何を思ったものか、突然お松に命じて、宝塚ホテルを電話で呼び出させた。
「お嬢はん。なんの御用だっか」
「なんの用でも、かまへんやないか。懸けていうたら、はよ電話を懸けてくれたらええのや」
糸子は何か苛々《いらいら》している様子だった。
宝塚ホテルが出た。
お松がそれを知らせると、糸子はとびつくようにして、電話口にすがりついた。
「宝塚ホテル? そう、こっちは玉屋糸子だすがなア。帆村荘六はんに大至急|接《つな》いどくなはれ」
「ええ、帆村はんだっか。いまちょっとお出かけだんね。十二時までには帰ると、いうてだしたが……」
と、帳場からの返事だった。
「まあ、仕様がない人やなア。どこへ行ったんでっしゃろ」
「さあ、何とも分りまへんなア」
糸子は落胆の色をあらわして溜息をついた。
「なんぞ御用でしたら、お伝えしときまひょうか」
と帳場が尋ねると、糸子は急に元気づき、
「そんなら一つ頼みま
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