て無下に斥《しりぞ》けられたそのせいであろうか。
道頓堀に真黒な臍《へそ》ができた。その臍は、すこしずつジリジリと右へ動き、左へ動きしている。それは場所ちがいの酔漢《すいかん》帆村荘六をもの珍らしそうに取巻く道ブラ・マンの群衆だった。
帆村はポケットから、ウイスキーの壜を出して、茶色の液体をなおもガブガブとラッパ呑みをし、うまそうに舌なめずりをするのだった。そのうちに、何《ど》うした拍子か、喧嘩をおッ始めてしまった。嵐のような人間の渦巻が起った。帆村は犬のように走りだす。その行方にあたってガラガラガラと大きな音がして、女の金切り声が聞える。
――帆村は一軒の果物屋の店にとびこむが早いか、太いステッキで、大小の缶詰の積みあげられた棚を叩き壊し、それから後を追ってくる弥次馬に向って、林檎《りんご》だの蜜柑《みかん》だのを手当り次第に抛げつけだしたのである。生憎《あいにく》その一つが、折から騒ぎを聞いて駈けつけた警官の顔の真中にピシャンと当ったから、さあ大変なことになった。
「神妙にせんか。こいつ奴が――」
素早く飛びこんだ警官に、逆手をとられ、あわれ酔払いの帆村は、高手小手に縛りあ
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