男」を捕えてみれば、それは人もあろうに「蠅男」捜査の指揮者であった村松検事であったとは。其の場に居合わせた人々は、事の意外に声もなく、ただ呆れるより外なかったのである。
村松検事に世話になっていた人たちは、水田検事の取調べに対して、もっといろいろ反駁してくれることを冀《ねが》っていた。しかるにこの人たちの期待を裏切って、村松検事はほとんど口を開かなかったのである。
なぜ村松は、多くを喋らなかったのであろう。彼は凶器と断定せられる文鎮の上に、自らの指紋がついているのに気がついて、もう何を云っても脱れぬところと、殺人罪を覚悟したのであろうか。それとも何か外に、喋りたくない原因があったのであろうか。
関係者たちに、ひとまず休憩が宣せられ、容疑者村松検事は別室に引かれていった。
現場では、無慚な最期をとげた塩田先生の骸《なきがら》の上に、カーキ色の布がフワリとかけられた。
水田検事の一行は、予審判事と組んで、惨劇の室のうちに、いろいろと証拠固めをしてゆくのであった。
丁度その半ばに、急を聞いて、帆村探偵や正木署長たちが駆けつけた。
いくら村松検事の味方が駆けつけたとて、犯行は犯行
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