あわしたようにそういいよったんで……」
「フーム」
 帆村はその奇怪な話を聞いて、狐に鼻をつままれたような気がした。
「そうそう、そういえば先刻の蠅男の電話では、蠅男は今夜のうちにまた誰かを殺すといっていましたよ」
「なに今夜のうちに、また殺すって」
 検事が愕いて聞きかえした。
「ほんまかいな――」
 正木署長は恐怖のあまりしばらくは口も利けなかったほどだった。
「誰か蠅男から脅迫状をうけとった者はないのですか」
 検事と署長とは、思わず不安げな顔を見合わせた。


   奇行《きこう》ドクトルの出現


「誰だろう、こんどの犠牲は?」
「さあ、蠅男から死の脅迫状をうけとったいう訴えはどこからも来てえしまへんぜ」
「フーム、変だな」
 検事と署長とは、強く首をふった。
「なんだ。誰が殺されるか、まだ分っていないのですか」
 帆村も唖然《あぜん》とした。蠅男は電話でもってたしかに殺人を宣言したのだった。そしてその殺人は、満都を震駭《しんがい》させるほど残虐をきわめたものであるらしいことは、蠅男の口ぶりで察せられた。あの見栄坊の蠅男が、それほどの大犯罪をやろうとしながら、相手に警告状を出
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