男がアメリカのギャングのように機関銃を小脇にかかえてダダダッとやったときの光景はいかがでした」
「ウン、なかなか勇壮なものだったそうだ。味方はたちまち蜘蛛の子を散らすように四散して、電柱のかげや共同便所のうしろを利用してしまったというわけさ」
「検事さんのお口にかかっては、こっちは皆シャッポや」と署長は苦笑いをした。「それよりも帆村はん、豪《えら》い妙な話がおますのや。それは蠅男の機関銃のことだすがナ、その機関銃の銃身《じゅうしん》がこっちには皆目見えへなんだちゅうのだす」
「え、もう一度いって下さい」
「つまり、蠅男は機関銃を鳴らしとるのに違いないのに、その肝腎《かんじん》の銃身がどこにも見えしまへんねん」
「それはおかしな話ですね。蠅男はどんな風に構《かま》えていたんですか」
「ただこういう風に」と署長は左腕を水平に真直に前につきだしてみせ、「左腕を前につきだして立っとるだけやったいう話だす。手にはなんにも持っとらしまへんねん。透明機関銃やないかという者も居りまっせ」
「透明機関銃? まさか、そんなのがあろう筈がない。何か見ちがえではないのですか」
「いや、蠅男に向うた誰もが、云い
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