帆村はジリジリして帳場氏の腕をつかんだ。
 帳場氏はそれに気がついて、
「ああ、その人やったら、今はお留守だっせ」
「ナニ留守だッ。どうしたんだ、その男は」
「いえーな。ちょっと宝塚の新温泉へ行ってくるいうて出やはりました」
「それは何時だ」
「来て間もなくだっせ。ちょうどあの西洋封筒を拾ったすぐ後やったから、あれで午後の四時十分か十五分ごろだしたやろな」
「うーむ、そいつだ。いよいよ蠅男に極《きま》った。分ったぞ分ったぞ」
「あンさんにはよう分ってだすやろが、こっちには一向腑に落ちまへんが」
「いや、よく分っているのだ。僕の云うことに間違いはない。さあ早く、その井上氏の部屋へゆこう、部屋の鍵を持ちたまえ」
 帆村は厳然たる自信をもって、帳場氏に命令するようにいった。そして彼は真先にたって、エレヴェーターのなかに躍りこんだ。帳場氏も、いまは帆村の言葉にしたがってついてゆくより外に仕方がなかった。
 エレヴェーターを四階で停めて、帆村は大川主任のところへ行った。そして、一部始終を手短かに話し、主任の応援と命令とを乞うた。
「ええッ。蠅男がこのホテルに入りこんどる。それはほんまかいな。ほ
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