「じゃ、何が入っているんだろう?……金兵衛の屍体かな?」
「そうかも知れない」
× × ×
巨人金庫の口は、遂に開いた。
帆村の解読した暗号は一字も間違いがなかったのである。
金庫の中には財宝は一つも残っていなかった。そして中には、実に私たちの予想だにしないものが入っていた。何?
それは瓲《トン》数で云って、三瓲あまりの大爆薬が入っていた。この思い懸《が》けない遺留品には、金庫を覗《のぞ》きこんだ係官たちも、「呀ッ」といって一斉に出口に逃げだしたほどだった。――いい塩梅に精巧なクロノメーター式の導火装置は、帆村と私の手で取除くことができた。だが爆発までに余すところはたった三時間だったのである。もしも帆村の解読が三時間遅れていたとしたらどうなったであろうか。江戸昌はひどいことをする。
「この大爆発を仕懸《しか》けて、江戸昌はどうするつもりだったろう」と私は帆村に訊ねた。
「これが江戸昌の恐るべき智恵なんだよ。彼は財宝だけでは慊《あきた》らず、その上この巨人金庫を爆発させて黄血社の幹部連を皆殺しにするつもりだったのだ。ね、判るだろう。この金庫の上には
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