め団員どもがすっかり何処かへ行ってしまった。こんなことは前代未聞さ。不良少年係でそろと、俺はもう威張っていられなくなったよ……」名刑事は白髪のだいぶん目立つ五分刈の頭を抑えて、淋しい顔をした。
「そうですか。では田代老人の金庫を廻って、暁団と黄血社の死にもの狂いの闘争が始まったんですね」
「で、貴方の此処へお出になった御用は……」と帆村は訊ねた。
「俺かい。俺は暁団の一味として、三原玲子を捕えにやって来たんだが……」
「三原玲子がどうかしましたか」
「先刻まで居ったそうだが、どこかへ隠れてしまったよ。はっはっ、なっちゃいない、全く」
名刑事は空《うつ》ろな笑い声をあげて、自らを嘲笑した。私は老刑事の心中を思いやって眼頭が熱くなるのを覚えた。
「……私が探し出しましょう、戸沢さん」
帆村は決然として云い出した。
「君が探す?」と刑事は帆村を見て、「そうか、頼むよ。……だが、江戸昌も死にもの狂いだ。気をつけたがいい」
5
「……あらまそーお、マダム居ないの。騙したのね。外は寒いわ、正に。おお寒む……」
帆村は、決戦の演ぜられているという江東を余所に、自宅の机の前に座
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