とはありませんが、不審をいだいたのは、あの日の正午過《ひるすぎ》でしょう。園長が一向《いっこう》食事に帰ってこられませんでしたのでね」
「園長は午前中なにをしていられたのです」
「八時半に出勤せられると、直ぐに園内を一巡《いちじゅん》せられますが、先ず一時間|懸《かか》ります。それから十一時前ぐらい迄は事務を執《と》って、それから再び園内を廻られますが、そのときは何処ということなしに、朝のうちに気がつかれた檻《おり》へ行って、動物の面倒をごらんになります。失踪《しっそう》されたあの日も、このプログラムに別に大した変化は無かったようです」
「その日は、どの動物の面倒を見られるか、それについてお話はありませんでしたか」
「ありませんでしたね」
「園長を最後に見たという人は、誰でした」
「さあ、それは先刻《さっき》警察の方が来られて調べてゆかれたので、私も聞いていましたが、一人は爬虫館《はちゅうかん》の研究員の鴨田兎三夫《かもだとみお》という理学士医学士、もう一人は小禽暖室《しょうきんだんしつ》の畜養《ちくよう》主任の椋島二郎《むくじまじろう》という者、この二人です。ところが両人が園長を見掛
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