ときまだ幼かった一人の男の子を抱きあげて、河内軍曹への復讐《ふくしゅう》を誓ったのです。その男の子――兎三夫《とみお》君は爾来《じらい》、母方の姓《せい》鴨田を名乗って、途中で亡くなった母の意志を継《つ》ぎ、さてこんなことになったのです」
 帆村は語を切った。しかし鴨田学士は、今度は何も云わずに項低《うなだ》れていた。
「もう後は云う必要がありますまい。最後に御紹介したい一人の人物があります。それはこの話のヒントを与えて以後私の調べに貢献《こうけん》して下すった故園長の古い戦友、半崎甲平老人であります。この老人は同郷《どうきょう》の出身ですが、衛生隊員として出征せられていたので、後に園長がX線で体内の弾丸《たま》を見たときにも立合い、また戦場の秘話を園長から聴きもした方です。鴨田さんの亡《な》き父君のことも知ってられるんですから、此処《ここ》へお連れしました。いま御案内して参りましょう」
 そういって帆村は立上ると、入口の扉《ドア》をあけた、が、其処には老人の姿は見えなかった。向うを見ると、爬虫館の出入口が人の身体が通れるほどの広さにあき、その外に真黒な暗闇《やみ》があった。
「呀《あ
前へ 次へ
全46ページ中45ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング