とした掻乱手段《そうらんしゅだん》です」
「出鱈目《でたらめ》だ、捏造《ねつぞう》だ!」
鴨田は尚も咆哮《ほうこう》した。
「では已《や》むを得ませんから、最後のお話をいたしましょう」帆村は物静かな調子で云った。「この犯行の動機は、まことに悲惨《ひさん》な事実から出て居ます。話は遠く日露戦争の昔にさかのぼりますが、河内園長が満州の野に出征《しゅっせい》して軍曹《ぐんそう》となり、一分隊の兵を率いて例の沙河《さか》の前線《ぜんせん》、遼陽《りょうよう》の戦いに奮戦《ふんせん》したときのことです。其《そ》のとき柵山南条《さくやまなんじょう》という二等兵がどうした事か敵前というのに、目に余るほど遺憾《いかん》な振舞《ふるまい》をしたために、皇軍《こうぐん》の一角が崩れようとするので已《や》むを得ず、泪《なみだ》をふるって其の柵山二等兵を斬殺《ざんさつ》したのです。これは、軍規《ぐんき》に定めがある致方《いたしかた》のない殺人ですが、それを見ていた分隊中の或る者が、本国へ凱旋後《がいせんご》柵山二等兵の未亡人にうっかり喋《しゃべ》ったのです。未亡人は殺された夫に勝《まさ》るしっかり者で、その
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