た。そして帆村探偵の姿も、やがて忍《しの》び闇《やみ》の中に紛《まぎ》れこんでしまった。それからは時計のセコンドの響きばかりがあった。午後五時、六時、七時、それから八時がうっても九時がうっても、帆村の姿は爬虫館へ帰ってこなかった。九時半を過ぎると多勢の畜養員や園丁が檻を担《かつ》いで入って来て無造作《むぞうさ》にニシキヘビを一頭入れては別の暖室《だんしつ》の方へ搬んで行った。仕事は間もなく終った。助手の須永は、先ほどから勝誇ったように元気になってくる鴨田理学士の身体を、片隅《かたすみ》から睨《にら》みつけていた。やがて爬虫館の柱時計がボーン、ボーンと、あたりの壁を揺すぶるように午後十時を打ちはじめた。人々は、首をあげてじっと時計の文字盤を眺め、さて入口をふりかえったが、どうやら求める跫音《あしおと》は蟻の走る音ほども聞えなかった。
「帆村さんはもう帰って来ないかも知れませんよ」
鴨田理学士が両手を揉《も》み揉《も》み云った。
「いつまで待って居たって仕様がありませんから、この儘《まま》閉めて帰ろうではありませんか」
警官と西郷副園長とが、腰を伸して立ち上った。須永も立ち上った。しか
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