代の余興《よきょう》でもやりますよ」
この帆村の言葉はどうやら鴨田理学士の金的《きんてき》を射《う》ちぬいたようであった。
「よろしい」彼は満更《まんざら》でない面持《おももち》で頷《うなず》いた。「ではこの装置を開けましょうが、爬虫どもを別の建物へ移さねばならぬので、その準備に今から五六時間はかかります。それは承知して下さい」
「ではなるべく急いで下さい。今は、ほう、もう四時ですね。すると十時ごろまでかかりますね。警官と私の助手を呼びますから、悪《あ》しからず」
「どうぞご随意《ずいい》に」鴨田は云った。「僕も今夜は帰りません」
帆村はその部屋から警官を呼んだ。副園長の西郷にも了解《りょうかい》を求めたが、彼も今夜はタンクが開くまで、爬虫館に停っていようと云った。
しかし帆村は、彼等と別なコースをとる決心をしていた。丁度そこへ助手の須永がやってきたので、万事について、細々《こまごま》と注意を与え、爬虫館の見張りを命じてから、彼一人、動物園の石門を出ていった。既に秋の陽《ひ》は丘の彼方に落ち、真黒な大杉林の間からは暮れのこった湖面《こめん》が、切れ切れに仄白《ほのじろ》く光ってい
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