他の縦半分《たてはんぶん》には頑丈な檻があって、その中に見るも恐ろしい大ニシキヘビが七頭、死んだようになって勝手な場所を占領していた。帆村は檻に掴《つか》まると、端《はし》の蟒から一頭一頭、腹の大きさを見ていった。しかしどうやらどの蛇も思いあたるような大きな腹をしたのは居なかった。しかしバラバラの死体を呑んだとして、犯行が三十日の正午《ひる》近くと仮定し今日は二日の午後であるから二日過ぎとすると、この間に蟒の腹は目立たぬ程に小さくなったのではあるまいか。
「鴨田さん」帆村は背後を振返《ふりかえ》った。「ニシキヘビには山羊《やぎ》を喰べさせるそうですが、何日位で消化しますか」
「そうですね」鴨田は揉《も》み手《で》をしながら実直《じっちょく》そうな顔を出した。「六貫位はある山羊を呑んだとしまして、先ず三日でしょうか」
それなれば十二三貫ある園長を八つか九つの切れにして、九頭の蟒に与えるなら、いままでまる二日は過ぎたから、もう程よく溶《と》けたころに違いない。しかし一体誰が殺したか、誰が死体をバラバラにし、誰が蟒に与えたか。それは一向にハッキリ判っていなかったが、この生白《なまじろ》い
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