客さんにこそ見せませんが、検べることは一般と同じに検べますよ。別に園長さんを呑んでいるような贅沢《ぜいたく》なのは居ませんでした」
帆村は副園長の保証の言葉を、そう簡単に受入れることはできなかった。園長を最後に見掛けたというところが、此の爬虫館と小禽暖室の辺であってみれば、入念に検べてみなければならないと思った。
「さあ、ここが爬虫館《はちゅうかん》です」
副園長の声に、はッと目をあげると、そこにはいかにも暖室《だんしつ》らしい感じのする肉色の丈夫な建物が、魅惑的《みわくてき》な秘密を包んで二人の前に突立っていた。
3
扉《ドア》を押して入ると、ムッと噎《む》せかえるような生臭《なまぐさ》い暖気《だんき》が、真正面から帆村の鼻を押《おさ》えた。
小劇場の舞台ほどもある広い檻《おり》の中には、頑丈《がんじょう》な金網《かなあみ》を距《へだ》てて、とぐろを捲《ま》いた二頭のニシキヘビが離れ離れの隅《すみ》を陣取ってぬくぬくと睡《ねむ》っていた。その褐色《かっしょく》に黒い斑紋《はんもん》のある胴中は、太いところで深い山中《さんちゅう》の松の木ほどもあり、こまかい鱗
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