《うろこ》は、粘液《ねんえき》で気味のわるい光沢《こうたく》を放っていた。頭は存外《ぞんがい》に小柄で、眼を探すのに骨が折れたが、やっとのことで彫《ほ》りこんだような黄色い半開きの眼玉を見つけたときには、余りいい気持はしなかった。帆村たちの入って来たのが判ったものか、フフッ、フフッと、風に吹きつけられたように身体の一部を波うたせていたのだった。
こんなのが、裏手にはまだ六七頭もいるんだと思うと、生来《せいらい》蛇嫌いな帆村はもうすっかり憂鬱《ゆううつ》になってしまった。
そのとき奥の潜《くぐ》り戸《ど》をあけて、副園長の西郷が、やや小柄の、蟒《うわばみ》に一呑みにやられてしまいそうな、青白い若紳士を引張ってきた。
「ご紹介します。こちらがこの爬虫館《はちゅうかん》の鴨田研究員です」
二人は言葉もなく頭を下げた。
「園長の最後に此の室へ来られたときのことをお伺《うかが》いしたいのですが」
「今朝も大分警視庁の人に苛《いじ》められましたから、もう平気で喋《しゃべ》れますよ」と鴨田研究員は前提《ぜんてい》して「私は時計を見ない癖《くせ》なのでしてネ、正午《ひる》のサイレンからして、あれ
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