判った前後のことを話していただけませんか」
「よろしゅうございます。閉園《へいえん》近い時刻になっても園長は帰って来られません。見ると帽子と上衣は其儘《そのまま》で、お自宅から届いたお弁当もそっくり其儘です。黙って帰るわけにも行きませんので、畜養員と園丁《えんてい》とを総動員して園内の隅から隅まで探させました。私は園丁の比留間《ひるま》というのを連《つれ》て、猛獣の檻《おり》を精《くわ》しく調べて廻りましたが異状なしです」
「素人《しろうと》考えですがね、例えば河馬《かば》の居る水槽《すいそう》の底深く死体が隠れていないかお検《しら》べになりましたか」
「なる程ご尤《もっと》もです」と西郷副園長は頷《うなず》いた。「そういう個所は、多少の準備をしなければ検《しら》べられませんので直ぐには参りませんでしたが、今日の午後には一つ一つ演《や》っているのです」
「そりゃ好都合です」と帆村探偵が叫んだ。「すぐに、私を参加させていただきたいのですが」
西郷理学士は承諾して、卓上電話機を方々へかけていたが、やっとのことで、捜索隊《そうさくたい》がこれから爬虫館の方へ移ろうというところだと解ったので
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