をあげて笑った。
帆村は別に怒りもせず、壺に手をかけて、逆にしたり、蓋をいじったりしていたが、やがて、恭々《うやうや》しく壺に一礼をすると、手にしていた大きいハンマーで、ポカリと壺の胴中《どうなか》を叩き割った。中からは黄色い枕のようなものがゴロリと転《ころが》り出た。
「これが我が国外科の最高権威、室戸博士の餓死屍体《がししたい》です!」
あまりのことに、人々は思わず顔を背《そむ》けた。なんという人体だ。顔は一方から殺《そ》いだようになり、肩には僅かに骨の一部が隆起《りゅうき》し、胸は左半分だけ、腹は臍《へそ》の上あたりで切れている。手も足も全く見えない。人形の壊《こわ》れたのにも、こんなにまで無惨《むざん》な姿をしたものは無いだろう。
「みなさん。これは博士の論文にある人間の最小整理形体《さいしょうせいりけいたい》です。つまり二つある肺は一つにし、胃袋は取り去って腸《ちょう》に接ぐという風に、極度の肉体整理を行ったものです。こうすれば、頭脳は普通の人間の二十倍もの働きをすることになるそうで、博士はその研究を自らの肉体に試《こころ》みられたのです」
人々は唖然《あぜん》として、
前へ
次へ
全35ページ中32ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング