くれるのを待っていた」
「博士、あたしには許婚《いいなずけ》が……」
「わしのロケットはあの第三十八階ですべての出発準備を整《ととの》えていたのだ。唯《ただ》、欠《か》けていたのは遊星植民に大事な一対《いっつい》の男女――男はこのわし[#「わし」に傍点]。その相手の女さえ来てくれると、それで準備は完了したのだ。さあオリオン星座附近で、新しい遊星を見付けて降下しよう。そこでお前は、幾人もの仔《こ》を産《う》むのだ。今は淋《さび》しいが、もう二十万年も経てば、地球位には賑《にぎ》やかになるよ。おお、なんと愉快な旅ではないか」
「ああ、あの[#「あの」に傍点]人。編集長め! そして、ああ、地球よ……」



底本:「海野十三全集 第1巻 遺言状放送」三一書房
   1990(平成2)年10月15日第1版第1刷発行
初出:「新青年」
   1932(昭和7)年6月号
※本作品中には、身体的・精神的資質、職業、地域、階層、民族などに関する不適切な表現が見られます。しかし、作品の時代背景と価値、加えて、作者の抱えた限界を読者自身が認識することの意義を考慮し、底本のままとしました。(青空文庫)
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