いいだろうか。
だが此処《ここ》で、一日でも早くこの事業に手をつけると、後に行っては千年や二千年は、早く目的を達することが出来る」
「手をつけるッてどうするんですの」
「いまでも全世界で、遊星へ飛ばすロケットを考えている学者が十五人、本当にロケットを建造したものが二人ある」
「まア、もうそんなに進んでいるのですか。駭《おどろ》いた、あたし」
「そんなロケットに乗ってみたいとは思わないかネ」
「思いますワ、博士」
「そうかい、では此《こ》の窓から、外を覗《のぞ》いて御覧」
「アラ、博士。パノラマが見えますワ。宇宙の一角から、フットボール位の大きさに地球を見たところが……」
「よく御覧、その地球は、見る見る小さくなってゆく!」
「ああ、恐ろしいこと。ああ、あたしは気持が変になった!」
「耳を澄《す》ましてごらん。エンジンの音がきこえるだろう。ロケットの機尾《きび》から、瓦斯《ガス》を出している音もするだろう」
「では、もしや……」
「ロケットは、地球を離れること九十五万キロメートル」
「博士、冗談はよして、元の地球へ帰して下さい!」
「わしは、君のような、若くて美しい女性がこの室に入って
前へ
次へ
全11ページ中9ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング