。
「丸尾、よく生きていた。わしは、漂流していると無人のボートの中でお前の片手を拾ったんだ。その手は、お前の書いた手紙を握っていた。だから、お前は、てっきり死んでしまったものと思って、あきらめていた。本当に、よく生きていたね。一体、これはどうしたのか」
「いや、これには、たいへんな話があるのです。しかし、猛獣は、どうしました。ライオンだの豹だのが、この船には、たくさんいるのです」
「それはもう皆、やっつけてしまった」
「えっ、やっつけてしまった。本当ですか。じゃ安心していいですね。ああ、よかった」
と丸尾は胸をとんとんと叩いた。
「猛獣狩は、もうすんだから、心配なしだ。それよりも、お前の方の話というのは……」
「ああ、そのことです。和島丸の同僚が、三名、いるのです。それから、この汽船ボルク号の生き残り船員が七八名いますが、こいつらは、かなり重態です」
「ほう、ボルク号。この汽船は、ボルク号というのか。どこの船か」
「ノールウェイ船です」
「うん、話をききたいけれど、それより前に、和島丸の仲間をよんできてやれ。心配しているだろう。私もよく顔をみたい。一体だれが生きのこっているのか」
「
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