る。おれがのぼったら、お前たちもあとからついてのぼれ」
やがてボートはぐんぐんと幽霊船の下に近づいていった。見上げるような巨船だ。すっかり錆《さび》が出ているうえに、浪《なみ》に叩かれてか、船名さえはっきり読めない。しかしとにかく外国船であることはたしかである。
なにしろ驟雨《しゅうう》はまだおさまらず、波浪が高いので、ボートはいくたびか幽霊船に近づきながら、いくたびとなく離れた。
「えい!」いくど目であったかしらぬが、とうとう古谷局長は、身をおどらせて船と船との間を飛んだ。綱梯子は大きく揺れているが、局長の身体はそのうえに乗っている。
「おい、はやく漕ぎよせろ。局長を見殺しにしちゃ、おれたちの顔にかかわる」
「ほら、いまだ。とびうつれ」
なぜか船尾から、綱梯子が三条も垂れていた。二号艇の勇士たちは、つぎつぎに蛙のように、この綱梯子にとびついた。貝谷も銃を背に斜めに負うたまま、ひらりと局長のとなりの梯子にとびつき、そのままたったっと舷側《げんそく》へのぼっていった。彼は一番乗りをするつもりらしい。
「おい貝谷、油断をするな」
早くもそれをみとめて、古谷局長が声をかけた。局長は白
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