らないと、計算がちがってくる。なにしろボートのうえには、二十四名の者が、ぎっしりのりこんでいるのだった。
「水だ、飯よりも水が呑みたい。船長、もう一杯水を呑ませてください」
「うん、いずれ呑ませてやる。もうすこし辛抱せい」
 船長は、子供にいいきかせるようにいった。だが、実のところ、太陽の直射熱はいよいよはげしくなって、誰の咽喉《のど》もからからにかわいてくるのだった。これでは、いくら水を呑んでも足りるはずがない。
「おーい、みんな。ボートのうえに日蔽《ひおお》いをつくるんだ。シャツでもズボンでもいいから、ぬいでもいいものを集めろ。そしてつぎあわせるんだ。そうすれば、咽喉の乾くのがとまる」
 船長は命令をくだした。
 部下は、それをきくと、元気になったように見えた。手持ぶさたのうえに、がっかりしていたところへ、ともかくも船長からやるべき仕事をあたえられたからであった。
 よせ布細工《きれざいく》の日蔽いは、だんだんと綴《つづ》られ、そして、大きくなっていった。
 やがてボートのうえに、この日蔽いは張られて、窮屈《きゅうくつ》ながら辛うじて全員の身体を灼《や》けつくような太陽から遮《さえ
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