かどうか。あと二三分で、本船は沈没いたします」
たいへんな報告であった。
灯火管制が、もう五分も早かったら、こんなことにならなかったかもしれないのだ。
佐伯船長は、首をあげて、ぐっとうなずいた。
「ボート、おろせ!」
悲壮な命令が下った。
青白い怪船
そういううちにも、和島丸の破られた船底からは、おびただしい海水が滝のようにながれこんで、船体は見る見る海面下にひきこまれてゆく。
「やあ、ひどく傾《かたむ》いたぞ。そっちのボートを早くおろせ」
暗《やみ》の中から、どなるこえがきこえる。
船上には、ふたたび探照灯がついた。誰か分らないが、もう船が沈もうというのに、その探照灯をくるくるまわして、海面をさがしている者があった。
このような騒《さわ》ぎを経《へ》て、あわれ和島丸は、わずか四分のちには波にのまれて沈んでしまった。
海上は、まっ暗で、なにがなんだかわからない。救命ボートが四隻《よんせき》、しずかにうかんでいる。
ごぼごぼどーんと、うしろではげしい音がしたが、これが和島丸の最後のこえのようなものだった。機関の中に海水がながれこんでその爆発となったもので
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