クチニオ四十五世にお前も感謝の祈りをささげなさい」
舞台の上で親子が抱きあって、わめいたり涙を流しているので、来会者には何のことだかわけが分らなかったが、やはり感動させられたものと見えて、またもや大拍手が起った。
治明博士は、その拍手を聞くと、身ぶるいして、正面に向き直った。
「来会者の皆さま。私は本日、全く予期《よき》せざる心霊現象《しんれいげんしょう》にぶつかりました。それは信じられないほど神秘《しんぴ》であり、またおどろくべき明確《めいかく》なる現象であります。ここに並んで立っています者は、私の伜《せがれ》でありますが、この伜は永い間、自分の肉体を、あやしい霊魂に奪われて居りましたが、さっき皆さんが見ておいでになる前で、伜の霊魂は、元の肉体へ復帰したのであります。こう申しただけでは、何のことかお分りになりますまいが、これから詳《くわ》しくお話しいたしましょう……」
とて、博士は改めて、隆夫に関する心霊事件の真相について、初めからの話を語り出したのである。
その夜の来会者は、十二分に満足を得て、散会していった。そして誰もが、心霊というものについて、もっともっと真剣に考え、そ
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