うに並んでいるのであった。
だが、誰一人として動かない。何の声も聞えて来ない。明かり一つ見えない。
それでも、それがアクチニオ四十五世の一団《いちだん》であることを認めた。博士は急に元気づき、その方へ足を早めていった。博士は、間もなく高い壁に行方を阻《はば》まれた。が博士は、すこしもひるむことなく、城壁《じょうへき》の崩れかけた斜面《しゃめん》に足をかけ手をおいて、登りだした。
時間は分らないが、やっと博士は城壁を登り切った。二時間かかったようでもあり、三十分しかかからなかったようでもあった。
「ああ……」
博士は眼前《がんぜん》にひらける厳粛《げんしゅく》なる光景にうたれて、足がすくんだ。
城壁の上の広場に、約四五十人の人々が、しずかに月に向って、無言《むごん》の祈《いのり》をささげている。一段高い壇《だん》の上に、新月を頭上に架《か》けたように仰いで、ただひとり祈る白衣《はくい》の人物こそ、アクチニオ四十五世にちがいなかった。
博士は、すぐにも聖者《せいじゃ》の足許《あしもと》に駆《か》けよって、彼の願い事を訴えるつもりであったが、それは出来なかった。足がすくみ、目がく
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