の家のことや母親のことや、それから友だちのことなどもすっかり忘れて、気軽なたましい[#「たましい」に傍点]の生活をたのしんでいた。
いつも寝起きしていた枯草の山が、トラックの上へ移しのせられ、どこかへはこばれていく。それを見た隆夫のたましいは、いっしょにそのトラックに乗って行ってみようと思った。
その日は、天気が下り坂になって来て風さえ出て来たので、農夫たちは急いで枯草《かれくさ》を車へのせ、その上をロープでしっかりしばりつけた。それから荷主の農夫が、パイプをくわえたまま、トラックの運転手にいった。
「とにかくカッタロの町へはいったら、海岸通《かいがんどおり》のヘクタ貿易商会《ぼうえきしょうかい》はどこだと聞けば、すぐに道を教えてくれるからね」
「あいよ。うまくやってくるよ」
トラックは走りだした。
隆夫のたましいは、枯草の中へ深くもぐりこんで、しばらく睡ることにした。車が停ったら、起きて出ればよいのだ。そのときはカッタロの町とかへ、ついているはずだ。
たましいは、ぐっすり寝こんだ。
運転手の大きな声で、目がさめた。枯草をかきわけて出てみると、なるほど町へついていた。古風《
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